長文置き場

備忘録

フォアレーゼン 茨城公演

 

正直単独で記事書くつもりなかったけどめっちゃ楽しかったから書く。

本当は確か去年の秋頃上演される予定だったものが今になった演目。フォロワーと「キャストが俺ら向け」「賄賂積んだかもしれん」と大喜びしたことが懐かしい。

 

話の舞台は江戸時代(幕末に近い)の水戸藩。色んな陣営の思惑が入り乱れる話なので、演者が3人に対して登場人物は10人前後いた気がする(メインキャラとしては5人くらいかな?)。だから兼ね役が多くて、特に何も予習していないと少し全体図の把握に時間はかかった。1人が正反対の立場の役柄を兼ねていたりもしたのだけど、でも思ったほど混乱しなかったのは整理された脚本と演者の力だなあと思った。全く予習せずにいったから何もわからなかったんだけど、史実に沿った話なんだね。

3人しかいないしキャストごとに感想を書いていく。

 

まず崚汰くん。

終演後フォロワーとずっと「崚汰くんヤバかったですよね!?!?!?」「崚汰くんが優勝」と大盛り上がりした。上手い人ということは知っていたのだが、生でガッツリお芝居を見るのは初めてだったので、開幕度肝抜かれた。マジでエグい。

まずナレーションの上手さがすごかった。第一声「声めっっっっっちゃ良いな!!!!」からの「ナレーションうっっっっっま!!!!」だった。歴史ものなので、まず前提知識として説明しなければならないことが多いし、難しい言葉や聞き慣れない名前も多いので、下手すれば退屈で眠たい説明台詞にしかならなかったと思うのだが、崚汰くんのナレーションは素晴らしく聞き心地が良かった。ランチ食べたばかりの午後公演だったけど、全然眠くならなかった。そこに感動した。

1時間という尺の都合上ナレで説明するだけで済ませる場面も多いので、ナレがかなり肝になっていて、ここが下手だったら他が上手くても退屈な物語と化していたところをやりきっていたのは本当に素晴らしかった。

それでいてキャラクターも複数人演じていたのだが、ナレからキャラ、キャラからナレへの秒速切り替えもすごかった。クールビューティー系から、中年っぽい感じ、老人っぽい枯れた感じ、引き出しの多さがすごいし、そのへんの切り替えは崚汰くんが1番上手かったなーと思った。涼しげにナレしてたかと思えば、次の瞬間必死な形相で山野辺に状況を訴えるおじいちゃん兵とかになってたりするからマジでヤバかった。ちなみに崚汰くんだとアスクレピオス先生のトーンが大好きなわたし、"男"のトーンに大歓喜していた。「この声しゅき……」しか考えられなくなった。

3人の中では最年少、23歳でこの仕上がりエグいて……と恐れおののいていた。隙のない仕上がりにはこの若さで……と思ったけど、芝居が全体的にギラギラしていたのは若さだなあと思ってニコニコしていた。

あとアフトで山下さんが崚汰くんのことべた褒めしていたし、トイレで崚汰くんに告白までしたそうなのだが、その気持ちメッッッッチャわかる!!!!ってなった。本当に圧倒されたし、強烈なインパクトだったな……。

 

次、千晃くん。

演技の感想の前に。忠義と三左衛門は別の人にやらせた方がよくなかった?って思っちゃった。忠義は山野辺の忠臣で、三左衛門はこの作品(山野辺視点)での悪役で立ち位置が真逆のキャラクターなのだが、それを絵のない朗読劇でやられると個人的にその都度頭を切り替えないといけないのが感情移入をぶつ切りされる感覚があった。どちらも重要なキャラクターな分、どちらかに集中させてほしかった感。千晃くん自体はどちらのキャラクターもしっかり演じきっていたと思う。

千晃くんはこの1年とか1年半ほどでだいぶ特色とか得意分野を感じられるようになってきて、とにかくまっすぐで意志も気も強そうな感じが根っこにあるなと思う。なのでとにかく自分の目指すことにまっすぐなキャラクターであればハマる、善悪は問わないっていうのが今回の朗読劇で思ったことかな。最近主人公がすごく多いけど、悪役らしい悪役もかなりハマっていて面白かった。主人公にピッタリなあのまっすぐな感じが、そのまま悪に反転する感じが新鮮だったし、悪役でもまっすぐだからこそ目的のために手段を選ばない役にハマっていたと思う。

忠義はいわゆる千晃くんがよくやりそうな役という印象。殿にまっすぐな忠誠を誓う家臣。この作品は山下さんと崚汰くんがバチバチ言わせていた場面が多かった印象があるが、忠義が最期瀕死になりながらも敵の首を折るシーンなんかはめちゃくちゃカッコ良かったし印象に残ったので、自分の見せ場ではちゃんと爪痕を残して蚊帳の外にならない存在感があったのがすごく良かった。

 

最後に山下さん。

山野辺というキャラクターの解釈が難しくて、観劇直後はなかなか感想を言語化するのが難しかったのだが、一日おいてまとまってきた感がある。

山野辺の解釈が難しかったのは、ノー予習だったのでこれがハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、彼をどういう風に捉えていいのかがわからなかったからだった。わたしの結論としては、彼は群像劇の主人公的な感じで捉えた方がしっくりくる。彼は結局三左衛門の策略にハマった挙句城や家臣たちを失い、奥方を取り戻すこともできず、最後廃人になるという何も成し遂げられなかった男なので、ヒーロー的な主人公として見ようとするとしっくりこなくなる。これは単に山野辺の出番が多いだけの物語として俯瞰的に見る方がしっくりくると感じた。

とはいえ観劇中は山野辺の掴めなさにどうもフワフワした印象しか残らないところがあったのだが、山下さんがアフトで「あまりヒロイックになりすぎないようにした」「掴みどころのないどっちつかずさを意識した」ということを言っていてかなり合点がいった。このフワフワした感じは狙ったものだったんだなと。やっぱり山下さんそういうパワーコントロール上手いし的確よなあ……。もっと山野辺を悲劇の主人公としてヒロイックに描けるのにそうしなかった山下さんのバランス感覚すごい好きだし、だからこそ歴史において絶対的な正義や悪はないというメッセージが伝わりやすかったと思う。

そんな難しい立ち位置の山野辺を破綻させず演じていたのがすごいなと思った。主人公っぽいけど全然主人公じゃない感じを絶妙なバランス感覚で表現していたというか。山下さんって決めるべきところはバシッと決めてくれるけど、逆に決めるべきでないところを決めない力を抜く上手さがあると思う。崚汰くん演じる"男"に対して、敵の罠と分かっていても奥方のために敵陣に向かうことを力説している場面とかの微妙に響いてこない感じとかね!結局彼のその選択のせいで大勢の家臣の命と城が失われることになったから、あそこは別に響いてこなくていいんだよな。大事な場面で情に流されて誤った判断をしてしまう人間の愚かさへの風情とか愛しさはあったけど。

最後の廃人になる演技は薄気味悪くて哀れでめっちゃ好きだった。子守歌めっちゃぞわっとした。山下さんはダウナーで爪痕残してくる感じが好きだ……ローテンションでの感情表現の引き出しがめっちゃ多いと思う。好き。

 

 

こんな感じかな!全体の話をすると、ただただ上手い人ばかりでめっちゃ良かったって思った。上手い人同士の芝居だと掛け合いに火花が見えるというか、芝居と芝居のバトルみたいな感じがして見ていてめっちゃ楽しかった。座組って足し算じゃなくて掛け算で、良い役者と良い役者が揃うと相乗効果でものすごい熱量のものが生まれるというか。逆に上手くない人が来ると他がどんなに良くても×0で0になったり。何かそういうことを思うような作品だった。

崚汰くんが開幕トップギアで剛速球を投げまくっていたように思えたし、何なら途中まで一人勝ちしている気すらしたのだが、それに2人が押し負けないし対等に火花散らしてる感じがすごくワクワクしたし、最後まで見終わると対等なパワーバランスの3人だったなという印象が残った。マジで良かったし生で浴びられて本当に良かった。自分がこれまで見てきた朗読劇の中でも上位に入る良さだったな!

 

書き始めて自分の中でも上手く言語化しきれていない部分があって、思ったこと考えたこと全部書ききれてはいないのだけど、これ以上書くと本格的に取っ散らかりそうなので(既に取っ散らかっているが)、とりあえずこのへんで。