長文置き場

備忘録

朗読劇 彼女が好きなのはホモであって僕ではない 感想

千秋楽公演を観劇してきたよ!!!

これ本当は今年の1月くらいに開催される予定だったのが一旦中止になって、9月に延期されたので、こんな情勢もあって中止を覚悟していたけれど、無事開催されて本当によかった!

 

 

まずはストーリーの感想から。原作未読。

結構重たい話というのはどこかで聞いていた気がするのだが、全くその通りだった。タイトルから受ける印象よりはかなり重たくて難しい話を取り扱っている。結構メンタル血まみれになる。でも着地の仕方は割と王道の青春ラブストーリーだったというのが1番強い印象。かなり重たいしキツいシーンもあるのだが、ジャンルとしては青春もののボーイミーツガールと考えていいと思う。

どうやら小説からは端折られた部分があるようなのだが、重たくて複雑で要素が多い話が2時間でしっかりまとまっていて、すごく見ごたえのある作品だった。

 

ただ前半と後半でだいぶノリが違うのにはあんまついていけなかったかな。作者自身が同性愛者の男性だからだと思うけど、安藤純のマイノリティである葛藤と、思春期特有の視野の狭さ揺れやすさが混ざった危うい描写はすごくリアリティを感じた。ただこの悩みの重たさや、途中で起こる三浦さんや友人たちとの衝突のドロドロ加減に対して、解決シーンに現実味がなさすぎて力業で解決した感というか、突然ドラマのようなフィクション色ゴリゴリの展開になるので戸惑ってしまった。

終業式の三浦さんのシーン、これがクライマックスで感動シーンとして描かれていると思うんだけど、わたしにはアウティングとしか思えなくて見ていてキツかった。普通に考えて全校生徒の前で本人の了承なくセクシャリティや2人の間のかなりプライベートな話をベラベラ話すの無神経すぎると思うし(この話がある程度広まっていたとしても)、結果純と三浦さんがみんなの前でキスして大団円!みたいな展開になったのはちょっと理解不能だった。

 

あのシーンだけはいただけないし見ながらスーッと冷めていく感覚があったけど、純と三浦さんの関係の着地点は爽やかさがあってよかったと思う。

相手に性的感情を抱けるか抱けないかでの判断に囚われていた純が、三浦さんに対してやっぱりその感情は抱けないし三浦さんもそれを受け入れながらも、ある種の特別な関係に落ち着いたのは純にとっての新しい一歩だったのかなと。結局純は大阪の学校への転校が決まって(三浦さんとの関係以外は何も解決してないのも落としどころとしては好き)、2人は別れることになったけど、この2人ここでサヨナラって感じ全然しなかったし、普通にまた会うことがありそうで爽やかなラストだった。

ただマジで重たくてキツい話なので、個人的に繰り返し見たい話ではないなと思った。思い出すために配信で確認してるけどしんどい……。

 

続いてキャストの感想。

まずは主人公の小林裕介さん。わたし最近裕介さんの熱がきてて、そんなちょうどいいタイミングで朗読劇やるって聞いて、告知見た瞬間考えるより先に指が動いてた。

主人公視点で進むので、出ずっぱりで喋り倒していた印象。わたしは普段アニメをほとんど見なくて、特に異世界系とかなろう系とかは全然見ることがないので、そういう作品で主人公をしている裕介さんを全く知らないのだけど、何かそういう役が多い理由何となくわかった気がする。過酷な目に遭う主人公がめっちゃハマる。

それでいて年上の彼氏であるマコトさんと話しているときは、BLCDで馴染みのある甘え感のある可愛いトーンが出てきて「たまらん……」となっていた。いやもう芝居以前に声がめちゃくちゃ可愛くないか?柔らかくて可愛い声質に絶妙な塩梅でハスキー混ざるのが最高なんだよね……。

特に印象的だったのは温泉デートの最中にMr.ファーレンハイトの死を知って取り乱すシーンと、母親にカミングアウトしたシーン。個人的に裕介さんの動揺して取り乱す演技めっちゃ好きで、ものすごく緊迫感あって迫るものがあるし、あとはハスキーな震え声がたまらなく可愛いのツボ押してくる。どうしようもなくなってたまたま会ったマコトさんに泣いてすがるのとか、そのときの「助けて……助けて」とか、見ていて可哀想で辛くて可愛くてたまらないみたいな色んな感情が押し寄せるシーンだった。

母親へのカミングアウトは、これはもうドシンプルに辛かった。生で見ていて迫力ものすごくて呆然となった。純が今まで抱えてきた苦しみをそのまんまぶつけられているような感情の煮詰まった演技だったし、そのときの表情も「泣いてる?」って思ってしまうようだったのもあって、1番強烈に印象に残ったシーンだった。

 

ヒロイン三浦さん役の吉岡茉祐さん。BLを語るシーンではオタク特有の気持ち悪さがありながらも、基本声のベースがすごく明るくてまっすぐさだったのが三浦さんにめっちゃ合ってるなあと思った。明るくてまっすぐゆえの一直線に突っ走っちゃう痛さみたいなのも漂わせていて、そこもすごくいい塩梅だったな。

わたしは三浦さんの1番の見せ場である終業式のシーンは好きではないのだが、とはいえ本当に純のことが好きなんだなという乙女心が伝わる熱のこもった素敵な演技だった。このシーン周囲からすすり泣きが聞こえていて、それだけ胸を打つ演技で良かったなあ。

 

亮平役のあまちゃん。ずっと良い奴。あまちゃんにかなり近い席だったのでよく見えたのだが、三浦さんに「高岡くんはホモっぽい」と言われたときのビックリするリアクションと、隣の八代拓さんに絡む動きをしていたのがめっちゃ可愛くて覚えてる。

純がゲイバレをしたときに、小野に「純のこと気持ち悪いって思わないのかよ!」と問い詰められて、言葉にはしないけど、本当は100%否定できるわけじゃないしすんなり純のことを受け入れられるわけじゃないという葛藤を感じさせながらも純の味方をする演技がめっちゃ好きだったな~。頑張って味方してる感。でも最初は取り繕いであったとしても、1度も純のことを否定せず、純の味方であり続けたからマジで良い奴。

 

小野役の八代さん。作品ではヒール役なのだが、マジョリティ代表でもある役だと思う。中盤から純に対するあたりが異様にキツいので、マジでセリフの1つ1つが聞いててしんどい。同性愛者を気持ち悪いと思っているのは本心だろうけど、大切な友達である亮平の気持ちを踏みにじるようなことをしたことへの怒りも相まってあのキツさになったんだろうなと思う。ただ純が飛び降りて入院したのを見ても、ゲイである純へのが差別感情があまり変わってないあたりはちょっと怖い。飛び降りて大けがを負ったとしても、命を落としたとしても、伝わらない人には何も伝わらないのが現実なんだなと。

こんな役柄だったので、最後の挨拶とか観劇後しばらくは役引きずって顔見ただけで憎たらしく感じてしまうくらいだった。それだけ素晴らしい演技だった。あと終業式で叫ぶシーンのとき顔を真っ赤にしていたことをものすごく覚えている。

 

Mr.ファーレンハイト役永塚さん。純と直接会ったことのない、ネットだけで繋がっている謎の人物で、永塚さんの浮世離れした感じというか現実の存在ではない感じの演技が雰囲気あってものすごく良かった!あの少年とも青年ともつかない感じだったり、もっと言うと男性性すら感じさせないどこにも属していない感じがすごく印象に残った。

だからこそ最後に明かされる実は中学生で純より年下だったという事実がすごく腑に落ちたし、だからこの役永塚さんだったのか……となった。そう思うと純とチャットをしていたときのMr.ファーレンハイトってなんか背伸びしてる感じあったよなと。そしてやっぱり言い方はサラッとしているものの、純の心を縛り付けるかのような「好きだよ」がめちゃくちゃ良かった。

 

マコト役興津さん。興津さんにはBLCDで散々お世話になっているので、生で芝居を見たいと思っていた人の1人だった。声が良い。というかマコトさん、冷静に考えると妻子持ちのくせに自分より20下のDKに手を出すという犯罪スレスレの行為をしている洒落にならないくらいヤバイ大人なのに、興津さんの声と演技カッコ良すぎて流されるんだよね……純の気持ちになっちゃう(?)ヤバイことしてるどうしようもない大人ゆえの色気がヤバかった。そのくせ「言うことが聞けないのか……」とか「たっぷり可愛がってあげるから良い子にしてなさい」とかSな教師っぽい感じで接するあたりが更にどうしようもなさある。まあ生で聞いてるときは色気ヤバすぎてぶっ飛ぶしかなかったのだが……。

純とマコトさんのシーン、思ったよりも生でBLCD朗読聞いてるみたいな雰囲気で体温40度くらいになったしずっと喉カラッカラになってたんだけど、多分なかなかできる経験じゃないのですごく贅沢な気持ちになった。

 

 

やっぱり声優現場の中だと朗読劇が1番好きだなと改めて思った。1回中止になったからぶっちゃけもう見れないと思っていたので、お蔵入りのままにならなくてよかった!本当に贅沢な経験ができた、この一言に尽きる。