長文置き場

備忘録

全アイドルオタクに見てほしい「少年ハリウッド」

タイトルが全て。噂はかねがね聞いていたけど、本当にアイドルの推しがいる人全てに見てほしい少年ハリウッド」というアニメを完走した。ぶっちゃけわたしの感想とか読まなくていいからとにかく見てほしい。

 

anime.dmkt-sp.jp

 

かつて、伝説のアイドルユニットと呼ばれた『少年ハリウッド』が活躍していた劇場「ハリウッド東京」。
彼らの解散から15年……。
劇場に集められた十代の少年達、風見颯、佐伯希星、甘木生馬、富井大樹、舞山春は、
自分達がこの先どうなるのかもわからないまま、日々レッスンにはげんでいた。
そんなある日、彼らが所属するノエルジャパンエージェンシーのシャチョウから、自己紹介の特訓をするように指示が出る。
マネージャーの勅使河原も交え、熱い指導が行なわれるが、心が折れかける者多発。
なぜなら、それは世にも恥ずかしい自己紹介だったからだ。
しかし、そんなところで、立ち止まっている場合ではないのであった。
なんと、シャチョウから、彼らは新生「少年ハリウッド」として活動してゆくことが発表されたのだ。
アイドルとして活動することを、心から喜ぶ者もいれば、嬉しそうじゃない者、
まだ何が起こっているかピンときていない者、あらゆる感情が渦巻きながら、
新生『少年ハリウッド』がいよいよ動き出す!

http://king-cr.jp/special/shonen-hollywood-anime/story/001.html

 

今のところ、dアニメでしか全話配信されていないのだが、ぶっちゃけ少ハリのためだけにdアニメに入会する価値、あります。それくらい強く推したい。ちなみに1話だけはyoutubeで見られるのでぜひ!!!!

www.youtube.com

絵柄が青年漫画っぽいというかリアル系なのでそこで敬遠しちゃう人もいるかもなんだけど、もったいない!!!!1話からアイドルオタクは死ぬので絶対に見てほしい。そこから3話まで見たら最終話まで見てる。

 

アイドル作品って今や飽和状態で星の数ほどあるけど、この作品はどのアイドル作品とも全く違っている。一言で言えば、アイドル哲学アニメ。

少年ハリウッド」というグループに選ばれた5人の少年たちの成長を見守っていく要素もあるのだけど、彼らの成長や活動を通して「アイドルとは何なのか」ということをすごく考えさせられる作品で、独自のアイドル哲学が毎話毎話出てくるのがこの作品独特の魅力だと思う。わたしは定期的にフォロワーとアイドル談義を繰り広げているようなオタクなので、毎回毎回刺さりまくって死んでいた。

なので、普段アニメを見ていなくても三次元のアイドルを推している/推したことがあるオタク全てに見てほしいし、思い当たる節が多すぎて毎話うめき声をあげる羽目になることを保証する。わたしは毎回「あ~~~~!!!!」「ウッッッ!!!!!」と言葉にならない声をあげていた。

逆に言うとこの作品って(特に三次元の)アイドルを推したことがない人にとっては、地味でよくわからないアニメに映るような気がするので、アニオタの素養よりはドルオタの素養が楽しめるかどうかを左右する気がする。

 

少ハリの好きなところは、アイドル哲学が1話から全開なところで、1話の時点で心を鷲掴みにされてしまった。

1話で強烈なのはキャッチフレーズの練習。このシーンも噂はかねがね聞いていたのだが、実際に見ると本当にすごい。元はアーティスト志望の舞山春(シュンシュン)が披露のトップバッターに指名されるのだが、そのキャッチフレーズがこれである。

笑顔でキュン!怒りんぼに…シュン。この八重歯にかけて、君の最後の彼氏になることを誓います。十五歳の高校一年生、シュンシュンこと、舞山春です!

キッッッッツ!!!!!!!!!!!!!!

見ていて「うわあ……」としかならなかった。でもこのあとのシャチョウのセリフがまたすごい。

みなさん見ました?恥ずかしいことを恥ずかしそうにやるのがどれほどまでに恥ずかしいか!なりきること、やりきること、それを大切にしなければ、アイドルはただの恥さらしになるという最高の例をシュンは今見せてくれました!

いやすごない??????でも思い返してみればアイドルのキャッチフレーズなんて大概冷静に考えれば恥ずかしいものばかりだし、恥ずかしいセリフをカッコ良く/可愛く言ってナンボみたいな商売だよなと。こんな感じで毎度毎度思い当たる節の多すぎるセリフが飛び出してくるのが少年ハリウッドである。

 

1話で印象的なシーンといえばもう1つあって、帰りの電車でのマッキーのセリフ。

キャーキャー言われて手振られるのってさ、裏を返せばバイバイってことなんじゃないの?あんたたちこっちの人間じゃないからねって。

ふ、深え~~~!!!!!!!

マッキーっておバカでポンコツ気味な最年長キャラだけど、結構視点鋭かったり、何か起こったときのキーパーソンになりがちなのが良いよね。

 

こんな感じで2話ではアイドルと一般人の友達問題、3話で既にアイドルは永遠ではない話がされる。このアニメは2014年の作品だが、2016年にSMAPが解散し、2020年に嵐が活動休止をした今見ると「そうだね……」と思う部分が多いのではないかと思う。

でもただアイドルは永遠じゃないで終わらせるんじゃなくて、それをいかに「永遠」のものとしていくかというところにも切り込んでいるところがめっちゃ好き。

 

ここからは好きな回の話。だいぶ絞っている。

7話 人生に人生はかけられない

もうサブタイがすごない!?!??!少ハリはサブタイがもう「哲学」だよね……。

これはカケルが自分は音痴であることを思い悩む話。そこから今まではやらされている感の強かった5人に、明確に少年ハリウッドとしてやっていくという意思が芽生える話で、めちゃくちゃ印象的だった。1話であれだけ恥ずかしそうにやっていたキャッチフレーズを、街中で人前でやりきる5人の姿にはものすごくグッときた。

 

16話 本物の握手

個人的にこの回1番有名な回だと思っていて、少ハリ見たことない人でも

握手できないくらいになってください!すごくすごく大きなところをお客さんでいっぱいにしている少年ハリウッドが、カケルくんが、見たいです!そしたら今日のこの握手がもっともっと宝物になるから!

というセリフはどこかで聞いたことあるんじゃないかな?わたしは知ってた。毎日劇場で握手できるようなレベルの人にこんなこと言えるって本当にすごいよね……。この言葉をきっかけにカケルは今した握手が本物かどうかは今の時点ではわからなくて、自分たちがもっと大きくなってこの握手を本物にしていかなきゃいけないってことに気付いて、それが社長の考えをも覆すのがすごい。

でもこの回の更にすごいのは、最後のカケルの

誰かの手に届かない存在になんて、僕はなりたいと思わない。本物になるってことが、そうなのだとしたら、そこを目指すことが、僕は、少しだけ怖かった

ってモノローグで終わるところ!ヤバくない!?!!?!??

何というかアイドルオタクって、ずっと手に届く距離が近い存在であってほしいって願望は堂々と言うことがはばかれるけど、逆に手の届かない存在になってほしいと思うことは良いオタクとして肯定されがちなところがある思っていて。それはさっきのファンの子のセリフが支持されていることからもわかる。でもアイドル側からしたら、手に届かない存在になるってそれはそれで怖いし、近くにいてほしいも遠くの存在であってほしいも結局はオタクのエゴの押し付けであることに変わりはないんだなって思った。

あとこれが21話に効いてくるって意味でもいいよね……。

 

17話 僕は君のアイドルだから

これベスト3に入るレベルで大好き。トミーが富井先輩のバーターでドラマに出演することになる話。富井先輩といえば3話の初代少ハリの合宿中のときに、これからの夢を発表しあうシーンで、「僕はね!ずっとみんなと一緒にいたい!ずっとみんなと歌って踊ってずっと少年ハリウッドでいたいな!」と言うんだけど、現実はそうはならなかったということをトミーや視聴者に突き付けてきた人である。

だからこの回でも「永遠にアイドルなんて無理だよ」ってトミーにしきりに言うんだよね。加えて大した演技力がなくても運が良ければ映画とかドラマにポッと出れてしまうのがアイドルの武器なんだから、その武器が使えるうちにアイドルを辞めた後の居場所見つけた方がいいよみたいなことを言うんだけど、刺さりすぎて死んだよね。これアイドルアニメに出てくるセリフなの?

でもそんな富井先輩がトミーとの交流の中で、

君がずっとアイドルでいられるよう僕も応援するよ。だって僕は君のアイドルだからね。図々しかったかな?君がいるから、僕もかろうじてまだ自分のことアイドルって言っていいかなって。

って言うのがマジで良い!!!!!!!!!!このときの阪口さんの演技が素晴らしいのもあって、めちゃくちゃ沁みる。アイドルってファンがいてこそのアイドルだから、自分がもうアイドルではないって思っても、歌って踊る仕事をやめたとしても、ファンがいればアイドルでいられるんだなあって……。ファンがいる限りそのアイドルは「永遠」なのかもしれない。裏を返せば、みんなから完全に忘れ去られてしまったときがアイドルでなくなる瞬間なのかも。

 

20話 僕たちの延命

またしてもサブタイがすごい。でも見ればわかる。センター交代回。20話と21話みんな好きじゃない?絶対みんな好きだからあげるか迷った(?)

これは最後のマッキーとシャチョウのやりとりに全て詰まってる。大好き。起こったことだけを見れば、マッキーにひどいことしてるように思えるんだけど、シャチョウなりのマッキーへの想いを感じるというか……。

どうしても欲しいものがある、どうしても手にしたい場所があるという人間は絶対に輝きます。あなたはセンターと引き換えに輝きを手に入れたんです。(中略) あなたはどこにいてもそれが自分の場所になるという光を手に入れたんです。

これ1話のシャチョウのマッキーへの言葉とか(リーダであるあなたは目印です)、6話のマッキーが自分の居場所に思い悩む回踏まえるとめちゃくちゃ効く。このセンターが今週いっぱいのマッキーマジで良いパフォーマンスしただろうなっていうのは見なくてもわかるよね……。あとこの回の次回予告でのシャチョウの

良さを言葉では説明できない存在が最もセンターに相応しいんですよ。

が真理すぎて震えちゃった……。アイドルって往々にして「何でこの人がセンター?」ってなること少なくないと思うんだけど、結局これなんだよな……。

 

21話 神は自らの言葉で語るのか

アイドル哲学の極み回。少ハリで1話選べって言われたら断然これ。今回は新センターになったカケルの話。この回、アイドルそしてセンターである自分と、アイドルではない素の自分がかけ離れていって、自分の言葉を他人に曲解して解釈されアイドルである自分のイメージが勝手に独り歩きしていくことに思い悩む回なんだけど、もうこれ刺さらんアイドルオタクいるんか!?

本当はそんなこと言ってないのにって思いながら、訂正もできず勝手にいいように解釈されていくのだいぶ居心地悪いんだけど、アイドルって常にこれに晒されてるんだなって思ったらとんでもない職業だなって思う。良い風に解釈されてるんだからいいじゃんってわけでも全然ない。本当の自分はそうではないのだから。

もうこの回のシャチョウガチで名言しかなくて困る。

アイドルってね、あるものもないものも、全てを求められてしまう存在なんですよ。

アイドルはね、追いけかる側の時と場合によっては、神にだって生贄にだって、なってしまうんです。

神だって生贄にだってというセリフが強烈なパンチラインすぎる。このあたりのシャチョウのアイドル論は全部突き刺さる。神様も生贄も自分からなるものじゃなくてならされるものという点では同じで、アイドルもなるというよりならされるものなのは、めっちゃわかるしシャチョウの言葉に共感できるんだよね……。

ならされるもの、そして他人から祭り上げられていく過程でもはやその行動が自分の意思なのか他人の意思なのかよくわからなくなっていく感じは「我らジャンヌ」という作品を見たときにものすごく感じたことで、これもアイドルオタクに絶対刺さる作品なので見てほしい。

mito-913.hatenablog.com

 

 

突然別作品のダイマをしてしまったが、この回を見ると、1話でシャチョウがカケルに言った言葉が「そういうことかあ」ってすごく納得できる。

シャチョウがカケルくんを何か気に入っている様子なのも、センターに任命したのもめっちゃわかるんだよね。カケルって他4人に比べて自分はこうでありたい、これがほしいみたいな自我とか欲求が薄い感じがしていて。マッキーは自分の居場所を見つけたがっていたし、シュンはモテたいちやほやされたい願望があり、キラは子役出身だから芸能界への執着がすごくあるし、トミーは誰よりも少年ハリウッドへの思い入れが強いし運気上昇担当トミーである自覚をすごく持っている。

でもカケルってそういう何かにこだわっている様子が全然ない。アイドルとして最初よりは振る舞いが板についてきたけど、一般人の感覚も残っているし芸能界に染まっていない雰囲気がある。アイドルがあるものもないものも求められる存在ならば、何も持っていないカケルこそ、もはやつじつまの合わないファンのあらゆる願望を投影できるという点で1番強いんだろうなと。真っ白なものなら何色にでも染まれるけど、自我という名の色を持ち始めたら染められる色は限られてくるし……。

多分シャチョウはそのへんでカケルを高く買っているのではと思っている。

 

 

いつも通り長くなってしまったのでそろそろ締めに入ろうと思う。

わたしが少ハリの感想をツイートすると、どこから見つけてきたのか毎回少ハリのファンの方がりつふぁぼしてくださって。放送からだいぶ年数経っているのに、今でも熱心なファンがついていて愛されているすごい作品なんだなと思った。でも実際全話見ると熱心なファンがつくのめちゃくちゃわかるし、世の中に面白いアイドル作品ってたくさんあるんだけど、色んな意味で少ハリは一線を画すアイドルアニメだなと思った。こんなにアイドル哲学真っ向からぶつけてくる作品なくない!?

少ハリってアイドルの現実とか、いかに過酷な商売であるかを容赦なく突き付けてくるんだけど、だけどアイドルがもたらす希望もしっかりと描いてくれているのが好きで、やっぱり「アイドル」が好きだなって思える。それは12話のシャチョウの

どんなに辛いことがあっても、悲しいことがあっても、アイドルになった者にしか知ることのできない幸せがあります。それだけは私が胸を張って言えます。

ってセリフからも感じられる。このセリフ本当に大好き。アイドルは過酷な商売だし、オタクはアイドルに重たいものを背負わせてしまうのは絶対的な事実だけど、アイドルとして活動していたシャチョウがすがすがしい顔でこう言ってくれるのが本当に"救い"なんだよな……。

あとあの独特な絵柄、全部見終わるとあの絵柄で正解だわって思うよね。彼らは二次元のアイドルだけど、三次元のアイドルと同じ環境で生きているって思わせてくれるので、流行りの二次元のタッチよりはリアルっぽい方がしっくりくる。

 

単純にアイドルアニメとしても、ぱっと見は地味な感じがするんだけど、1話丸々舞台だとか音楽番組だとか挑戦的なことをめっちゃしていて、これによってめっちゃリアリティを感じるし、少年ハリウッドというグループに感情移入ができるようになっているので、そのへんもすごくよくできていると思う大好き!

どうやら小説版があるようなので、そちらも読んでいきたいと思う。