長文置き場

備忘録

華Doll*5巻 For...感想

※noteに投稿したものを少し加筆修正したものです。(はてブとnoteの間で優柔不断なオタク)

 

辛すぎるラストで終わった4巻、「明日5巻聞きたい」以外の感情を失いながらも、昨今の情勢で延期したり何なりがありながらもようやく5巻が発売されました!おめでとうございます!

早速感想に移りたいと思います。ネタバレしかありません。

 

 

 

 

結城眞紘について

前回の終わり方があんなだったので、眞紘(と凌駕)メイン回なのはわかっていました。前回までで理人とチセ、薫と陽汰は一旦は関係性や抱えている問題が落ち着きましたが、この2人はもうずっと微妙な距離感のままだったので、どういうところに落ち着くのかすごく気になるところでした。

眞紘は赤色でセンターながらも、今までのMVなどで示唆されている通り、最も開花が遅いメンバーで、かといって陽汰のようにわかりやすく焦燥感が表に出ることがなく(出さないように努めていた)(あとまだ咲いてないの自分だけじゃないってことが気休めにはなってたのかもしれない)、主人公のようなポジションでありつつも今まであまりドラマの中心にはなっていませんでした。それが満を持しての掘り下げ回なのでまぁーーーーーーーーーしんどい。

 

冒頭の構成がすごく上手くて、最初一般人の会話から始まり、眞紘を筆頭にAnthosが世間でどう思われているのかということを提示し、そこから理人と薫が行った収録現場で眞紘の様子がおかしかったので帰されたということが知らされ、そのことを他のメンバーに知らせます。ここまでが大体10分で、その間眞紘が一切出てこないことで更にオタクの不安を煽るんですよね。本当にはなどるくんはオタクの心を弄ぶのが上手すぎます。

それを踏まえての1-22の眞紘、第一声聞いたときにあまりにも怖くて震えました。ストレスが限界値を突破しキャパオーバーした結果、心がパンクして情緒が死んだ人の声だと思いました。普通を装ってはいるけれど、誰が聞いたって異様だとわかる喋り方が本当に聞いてて辛かったです。

薫が眞紘のことをここ最近出会った頃より距離が遠く感じると言っていましたが、このときの喋り方で周囲に対して心のガードがガチガチだしそのガードにもトゲがたくさんついているみたいに感じて、薫の言葉の意味があまりにもわかりすぎました。

 

このときの眞紘、過去イチ自分のこと嫌いだと思ってるだろうし自己肯定感がどん底だし、だからこそ心から心配してくれる凌駕に対しても、こんな俺のこと心配するなんてバッカじゃないのという意味で嘲笑的な言動をしていたんだと思います。結局のところその嘲笑は自分に返っているというか。

結局凌駕や他のメンバーが眞紘をフォローしたところで、現実として眞紘だけが花が咲いていないし、その事実は褒められたところで変わらないし、だったらそんな無意味に持ち上げるようなこと言わないでって感じなのかなぁと思いました。あんたのその態度が俺を追い詰めてんの!!!と言わんばかりの眞紘の凌駕に対する当たりのキツさが本当にしんどかったです。チヒロに対してもこういう感じで言葉を受け付けなかったんだろうな……。

 

もちろん眞紘が本心からアイドルなんてどーでもいい、Anthosなんてやめていいと思っているわけないということは1-22聞けばわかるし、この後のチヒロとのやりとりでハッキリ示されるわけですが。

チヒロとの会話で「兄さんと一緒にアイドルを目指すのが夢だった」「俺のことちゃんと見てくれるの兄さんしかいなかったから」とチヒロに対して大きく信頼を寄せていたしチヒロのことが大好きだったということが伝わってくる一方、「俺(チヒロ)さえいなければ眞紘は心から笑顔でいられる。チヒロの弟じゃない。Anthosの眞紘として、Anthosのセンターとして、信頼する仲間に囲まれて最高のアイドルになれるんだ」というチヒロの言葉もきっと眞紘の本音で、このあたりの心情描写がえげつなくないですか?

 

はなどるは綺麗な感情と同居する濁った感情を描くのが本当に上手いなあと思います。この後の陽汰の「自分が最後じゃなくてよかったと思った」とかもそうですが。良い子や優しい子がどんな状況にあってもネガティブな感情を持たないわけではないという描き方にすごく誠実さを感じるし、キャラクターにちゃんと血が通っていることを感じられます。かといってそのへんを過度に露悪的に描かないところも好きなんですよね……。

 

眞紘の自己肯定感の低さの根本には、天霧の息子、チヒロの弟としてしか見られなかった、それは自分に能力がないからだというものがあって、こんな状況においても泣けなかったのは今までの経験から変に諦めが上手くなっていたり、明るくて素直な眞紘を演じるうちに泣くのが下手になっちゃったからだろうと思います。だから今回思いっきり拗ねて凌駕に当たって良い子の仮面をボロボロにしてから、最後にみんなの前で本音をぶちまけて開花するという流れは本当に胸が熱くなりました。

眞紘を救う役割が凌駕だったのも、眞紘の自己肯定感の低さには家庭環境が深く関わっていて、天霧社長やチヒロのことを知っている凌駕じゃないとそのへんを拾うことができなかったからということなんでしょう。

 

緊急ストレッチャーに潜り込んで強引にセキュリティ突破して、眞紘のためにみんなが医療棟に駆けつける展開、本当に激熱以外の何物でもありませんでした。それだけ眞紘は他のメンバーから愛されていて、必要とされていて、そこに天霧の息子とかチヒロの弟だとかは全く関係ないっていうことが5人の言葉からガンガン伝わってきて、今までの彼らの交流の集大成のようで、こんな素敵な仲間たちができてよかった…よかった…という気持ちになりました。

これまでのMVで眞紘は他の5人とは違う特別性があるようなことは散々示されていて、万が一咲かなかったら……という不安が全くなかったといえば嘘になってしまうので、今回無事に咲いて本当に良かったです!

Anthos6人でのデビュー本当におめでとう!

 

他のメンバーについて

まずは凌駕。5巻の準メイン。実は天霧側のスパイだったり、チヒロと友達だったり、チヒロの死の影を追いかけてプロダクションに参加したりと、重要な事実が明かされました。とはいえこのへんもうオタクの間ではほぼ確くらいの認識はされていたので、答え合わせみたいな感じでしたが。凌駕についてはこれよりもっと踏み込んだことが謎なのですが、2ndに持ち越しのようですね。

今回の凌駕の立ち回りはすごくアツかったです。今まで凌駕ってわかりやすく隠し事をしている素振りを見せたり、自分の秘密を探られたくないからこそ必要以上に相手にも踏み込まないようにしていて、だからこそ眞紘との関係もずっと微妙なままだったという印象だったので、カッコ悪い姿を晒してでも眞紘を説得しようとする姿に1巻からの変化をすごく感じました。1巻や2巻のあたりの頼れるお兄さんムーブはお仕事モードであって、本来は結構感情豊かなタイプなんでしょうね。

1回目の医療棟訪問のときに眞紘に言った「俺はチヒロみたいに優しくないからいつでも喧嘩してやるぞ!」が好きです。

 

理人は君はいつでも最善の行動をしようとするね……という印象が相変わらずでした。あと想像以上にチセちゃんと仲良くなっていてびっくりしました。みんなと喋っているときに突然2人の世界に入るな……。チセちゃんとは最初はいかにもウマが合わなそうな感じで、2巻では地獄の大喧嘩をしながらも、チセちゃんの言動で理人が思わず笑ってしまうのは今までの関係性を感じてグッときました。

 

チセちゃんも本当に変わりましたね。最初はとにかくチトセはイヤだ自分はチセなんだって思いが強すぎたりとか、シナスタジアの能力のせいで悪気はないのに周囲と噛み合わない、情緒不安定になってしまう場面が多々あったけど、自分からメンタルコントロールしようとしてて成長してる…!って思いました。理人のフォローによるところも大きいとは思うんですが、みんなとのかかわりの中で、自分のことでいっぱいいっぱいだったのが周囲も見られる心の余裕を獲得できたようで、ホッとしました。本当に初期の頃の不安定さが薄れた気がします。

 

はもう安心感しかない。1巻の頃の引っ込み思案が嘘みたいにハッキリモノを言うようになったし、感情表現もしっかりするし、その頼もしさに聞いていて救われる感じがします。陽汰との繋がりが強いけれど、眞紘に対しても同室で1番最初に仲良くなったメンバーだからこその思い入れが強くあるようで、そのへんが聞いていてグッときました。

 

陽汰は未開花の焦燥感で頭がいっぱいだったのが、ようやく安定して良かったなぁと思いました。あと陽汰は意外と核心を突くような発言が多い気がしました。センターという役割についても、そんなに気負う義務はないのにという発言に対して「義務じゃなくても頑張りたくなるよ。期待した誰かにがっかりされたくないじゃん」と返したのはすごく納得できましたし、事務所の眞紘に対しての理不尽な対応に対して「そんな簡単に切り捨てるなら、何でセンターを任せたりしたんだよ!」っていうのはそーだそーだ!!!!と思いました。ここが1番謎なんですよね……。

 

疑問点

上にも書いたように、5巻で明かされた事実は正直オタクの間ではほぼ確くらいのことだったので、予想してたよりは明かされなかったという印象でした。何なら4巻の灯堂彼方とか彼が薫の主治医だった方がビックリしました。以下個人的に疑問に思っていることを羅列します。

 

・理人について

はなどるは開花後半組ほど抱えている事情などが詳細に描かれていたので、1番最初に開花した理人って他のメンバーと比べて明らかに情報量が少ないと感じています。開花のトリガーも唯一検討がつきませんし(開花には感情の揺れが大きく関わるから余計早い段階で開花した理由が謎)、モデルとしてキャリアを全て捨ててまでアイドルを目指した理由もわかりませんし、チセちゃんにどうしてあんなに入れ込むのかも正直謎です。推測の余地はいくらでもあるけれど、具体的な証拠に欠けることが多いという印象です。正直ポエムも理人だけ本編でどういう意味なのかわかるようなことが描写されていません。

そして理人については父親がプロジェクトに関わっていることもあり、凌駕や眞紘のように他のメンバーでは知りえないことを知っているのではと思うのですが……。あとは灯堂彼方は華Dollプロジェクトを良く思ってはいないようなので、なぜそこに息子を参加させるのを認めたのかも重要になってくる気がします。

 

・眞紘の特別性

眞紘はMVで散々他の5人とは違うという描写をされていましたが、それは開花が1番遅かったからとか天霧の息子だからという理由ではないと思います。もっと何かプロジェクトの根幹にかかわる部分で特別性があるということだと考えているのですが……。

ジョーカーに例えられたり、I know, Who I amで1人だけ羊になっていたり、開花としたとはいえ不穏な要素がまだまだ残りますね。

 

・プロダクションの動き

これに関してはもう不可解なところしかなくて頭を抱えています。眞紘に対して1年の期間を待たずに切り捨てようとする動きとか、陽汰が指摘したようにそれでいてセンターを任せたり、何がしたいのか全然わかりません。

 

・記者の死亡

冒頭サラッと描写されていましたが。わたし正直この記者については天霧がわざと泳がせていて(その時点で未開花だった陽汰・眞紘のみが狙われたあたり)、用済みになったから切り捨てたという風に考えています。

 

・天霧のスパイとしての凌駕

凌駕がスパイであるとか、内部に通じているみたいな伏線は散々張られていたのでそのこと自体に驚きはないのですが、もっと具体的な天霧やチヒロとの関係が気になるところです。

 

・陽汰のロックオンの描写

・Anthos7人説

このあたり結局何だったんでしょう?2ndで明かされるのかな。

 

総括

今回は眞紘フィーチャー回ということで、山下誠一郎さんの演技がエグいのなんの……。1-22あたりの虚勢を張った痛々しい喋り方から、涙声になりながら素に戻る感じとか、最後の最後で本音ぶちまけるところとか、チヒロもそうですし、演じ分けが本当に素晴らしかったです。シンプルに本当に良い役者さんだ……って思いました。

はなどるをきっかけに山下さんのことは個人的にかなり注目しているのですが、こういう素敵な演技をする役者さんを知れたことがこの作品を好きになって1番の収穫かもしれないと思うくらいです。結城眞紘役が山下さんでよかったな……。

そんな眞紘と1番に対峙する凌駕役の濱野大輝さんの演技もレシーバー感がすごく良くて、低くて落ち着いた声や口調の中に苛立ちがめちゃくちゃ混ざっている感じとか好きでしたし、めちゃくちゃ熱演だ!と思いました!

 

正直女性向けだったりアイドルコンテンツにおいてソシャゲ形式が大流行し無料で触れるのが当たり前になっている時代で、ドラマCDって大丈夫なのか……?と思っていました。わたし自身ドラマCDという媒体だったからこそ、サブスクで聞ける曲は好きでもドラマCDを買ってドラマを聞くことにはハードルの高さを感じていました。

だけれども、ドラマパートもサブスク解禁されたりだとか、コミカライズが決定したりだとか、来年にまたがる6人それぞれのソロCDの発売決定、ルルディの活動再開(これを活動再開って告知するのがまた上手い)とガンガンに展開していくようなので、それがものすごく楽しみですし、コンテンツの体力を感じてホッとしたところもありました。

 

アイドルコンテンツ戦国時代の中で、奇をてらうことのない真摯な作りのドラマパートだったり、異常としか言えないクオリティの曲だったり、発売されるグッズはどれも可愛くてセンスがあるし、あらゆる方面で良質なものを提供してくれている華Doll*というコンテンツにもっと続いてほしいと改めて思いました。はなどるに関しては結構ゆるおたなんであんまり大層なこと言えないんですけど!でも予定しているところまでは続いてほしいです!

これからの展開と2ndシーズンが楽しみです!!!!ルルディのキャスト誰が来るのかなーーー!?!?