長文置き場

備忘録

推しが武道館行ってくれたら死ぬ 感想

(元々開催は絶望的だと思っていたけれど)推しの誕生日公演の延期が決まって虚無虚無プリンになっています。もちろん中止ではなく延期という措置を取ってくれたことはすごくありがたいと思うし嬉しいけれど、その日だから意味があったんだよなーーー!!!という公演なのも正直なところで、何とも言えない気持ちです。

 

元々インドアオタクだったのに、現場に通うオタクになってからすっかり家での過ごし方を忘れてしまい、しっくりくる家での過ごし方が見つからず試行錯誤(?)している日々です。基本ソシャゲして漫画読んでゴロゴロしています。人間としての意識が低い。

 

前置きはここまでにして、今回はアニメを見てから全巻買いした「推しが武道館行ってくれたら死ぬ」の話をします。

わたしもアイドルオタクの端くれなので、推し武道は毎週楽しみに見ていました。期待通りの面白いアニメだったので、普段漫画あまり買わないんですけど、現場もないしということで全巻買いしました。最近のオタクをフィーチャーした作品といえばトクサツガガガが思いつきますが、こちらが特撮オタク以外でも幅広いオタクに刺さる作品だとしたら、推し武道は地下アイドルやそれに実態が近い界隈のオタクほど刺さる作品だと思います。作中で描かれているオタクの推しへの気持ちはどの界隈のオタクでも共感できると思うんですけど、推しとオタクの距離の近さとか、地下ドル特有の文化とか、そのへんがピンとこないと感情移入しづらいところも多々あると思いました。

とはいえ1話から「舞菜は私がいなくても何も思わないだろうけど、私の人生には舞菜の1分1秒が必要なんです!」という全オタクが共感できる作中屈指の大名言が飛び出すので、この時点で名作漫画ということがわかります。めっちゃ面白いのでぜひ読んでほしいです。

ちなみにエンディングの桃色片想いが最終回ではえりぴよさんのソロじゃなくて、舞菜とのデュエットになってたのあまりのエモさに倒れました。

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これ映像も良すぎる。フルもサブスクで配信されているので是非聞いてください。

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ここからは踏み込んだ感想です。特に好きな回をピックアップします。

フェス回(3巻ラスト~4巻)

4巻丸々使っていたり、アニメでも最終回のエピソードになっていただけあって、とにかく良いシーンと名言が多くて大好きです。えりぴよさんと舞菜のドラマも、ChamJam内のドラマもとにかく印象に残るシーンが多かったです。

ChamJamだとわたしはあーやが推しなんですけど、この回では特に優佳とのやりとりが好きです。フェスに向けてのリハ中、あーやに「優佳は踊れるほうなんだからやる気出せやる気!」と言われた優佳が「優佳はあるていどのことはなんでもできちゃうの。(中略)でもれおちんってダンス上手くないじゃん?でも人気1位じゃん?そういう…ことって、あるじゃん?結局はさあ生まれ持ってのオーラってかさあ」と返すんですが、それに対してあーやが「バカだな。頑張ったら頑張った分だけ好きになってもらえるかもじゃん。ファンはそういうの見るんだよ。だかられおは1位なの」と答えるのがめちゃくちゃ好きです。本当それな…!!!!!!

実際生まれ持ってのオーラが左右するのは確かなんですけど、オタクが推しを推す上で重要視してるのは夢に向かって努力している姿だと思います。もっと砕けた感じで言うとちゃんと仕事にやる気を持って取り組む姿勢に好きが芽生えるんですよね。

このことがちゃんとわかってるあーやは絶対人気メンになれる!現場で積まなくても接触できてしまうメイドカフェのバイトをやめて、幼女ロリ系じゃなくてえりぴよさんに接するときみたいなツンデレだけど優しい感じのキャラで売れば人気出るよ…!

巻末にChamJamのブログのイラストが載っていて、1巻のときこそれおが1番更新数多かったんですけど、2巻以降はあーやが更新数トップなんですよね。そういうところも好きです。

 

えりぴよさんと舞菜でいえば、初めてのフェスで今までにない数のたくさんのオタクたちを前に真っ白になってしまった舞菜がえりぴよさんを見つけて気を持ち直すシーンがすごく好きです。推しに安心感を与えられるオタクっていいなあ…。

フェスなので他のアイドルのパフォーマンスを見たえりぴよさんの「たくさんのアイドルを見ても思い出せるのは舞菜のダンスだけだ。こんなにいっぱいいるのにわたしの世界には舞菜だけだ。一番とかじゃなくて舞菜だけなんだよなあ」というモノローグもものすごく好きです。こんな風に思わせてくれる推しに出会えるっていいなあと思いました。アニメでもこのシーンはすごく印象に残っています。

この前にあるくまささんの「いっぱいいるアイドルの中でもたった一人のれおちゃんに出会えたこと僕は人生の宝に思っています。れおちゃんにとって僕はたくさんいるオタクの中の一人だけど…」というセリフもすごく素敵で好きです。くまささん正真正銘のれおのオキニでTOなのに、自分はたくさんいるオタクの中の一人って思っているところがめっちゃ良いなあと思います。本当に理想のオタク像なんですよね…。

 フェス回は名場面も多いのですが、フェスで1番人気のグループに比べるとちゃむは全然集客できていなかったり、れおの年齢問題があったり(れおは23歳だけど共演グループには13歳の子とかがいる)、ビターな後味も残るところも印象的です。

 

6巻31話

これは同担拒否ガチ恋勢の基さんが自分のオタクスタンスについて悩む回です。

推し武道読んでいると基さんの描き方がすごく上手だなと感心することが多いです。「同担拒否」「ガチ恋」って聞いただけでうわ厄介オタク…って思う人多いだろうし、ちゃんと描こうとしたらドロドロな印象を与えかねないんですけど、心理描写は上手いのに印象としてはサラッとしているのがすごいなと思います。

描写を見ていると基さんって確かに同担拒否なんですけど、えりぴよさんとかくまささんの前で複雑感情を話したり、内心では色々感情が巡っていたりするけれど、別に他のオタクを攻撃したりはしてないんですよね。そして基さん自身はガッツのえりぴよさんやくまささんのツッコミ役になったり振り回されたりすることも多くて、穏やかなキャラクター付けなので、そこがあまり読んでいて重たくならないのかなと思います。

この回で基さんは同担拒否であることとかガチ恋勢であることを受けいれられているわけじゃなくて、こんな自分は性格悪いし正しくない、ちゃんと推しを推せてないんじゃないかと何かと卑屈になってしまうんです。わたしも基さんと同じ理由ではないけれど、自分のオタクスタンス正しくないって悩むことは何度もあったのですごく共感しました。

そんな基さんに対してくまささんが「基さんご自身が1番自分のオタクの仕方を否定しているんじゃないですか?」と声をかけるのがめちゃくちゃ好きです。わたしもすごくハッとして、こういうの大体謎に自分で自分を縛り付けてるんだよなあって。

その後にえりぴよさんが「正しいとか正しくないとかわかんないし」と言うのも好きです。えりぴよさんは基さんのガチ恋に対してずっと興味ないスタンスをとり続けているんですけど、それも良い人だなあとすごく思います。オタクってすぐ他のオタクのスタンスにあれこれ言いたがる生き物なところあるじゃん…?自分とオタクスタンスが違ったとしても、別に興味ない、好きにすればいいじゃんって態度取れるのもいいなあと感じるところです。そういう肯定の仕方もあるんだなあって思いました。

推し武道には色んなスタンスのオタクが出てくるんですけど、肯定はしなくても否定もしないところが良い世界だなあと思います。

 

6巻32話

えりぴよさんが同僚であり二次元アイドルオタクの美結をリリイベに誘う回。

これはもう舞菜と美結の接触が最高に尽きます。舞菜に「(えりぴよさんって)どこにでも来てくれるし、えりぴよさんわたしの言ったこと全部叶えてくれるんです。なんだかもう魔法みたいに…」と言われた美結が「あなたのことが好きだからでしょ。オタクってそれだけだから」と返すのにそれな~~~~~~~~!!!!!!という感情が止まりません。それな!!!!!!!!!!!!

なんやかんやいってオタクの原動力って推しに対する好きだし、それだけでどんなことでもできちゃうからアイドルにとっては魔法のように見えるのかなあ。でも魔法じゃないんだよな。日々働いて色んな手間暇かけて現場にたどり着いてるんだよな。そこの想像力もっと養った方がいいよ舞菜~~!!!!がんばれ!!!!!

あとこの回、美結のChamJamリリイベに対する反応があまり芳しくなく、リリイベの途中で飽きていたり、感想を聞かれて「冬太朗くん(推し)への好きが溢れた♡」と返しているのがリアルで好きです。他界隈の現場誘われても結局推しのことを考えてしまうそれな。

 

好きな回のピックアップが後半に偏ってしまったんですが、正直全編に渡って面白いです!オタクあるあるのキレは初期の方が強いし笑いどころも多い印象です。もう好きなセリフとかシーンあげたらキリがないほどです。

推し武道はオタクあるあるももちろん面白いんですけど、推しを推すということに対してポジティブな気持ちにしてくれるところが大好きです。えりぴよさんとかくまささんとか基さんとか、作中に出てくるオタクたちがオタクしていて楽しそうなところを見ているとすごく元気をもらえるし、わたしも楽しくオタクやろ!という気持ちになれます。

 

世界がこんなときだからこそ、推しがいるって心の支えになるんだなあって思います。推しの現場にいるときが1番生を感じる瞬間であるタイプのオタクにとって今の状況はキツいですし、こんな状況が2か月も3か月も続いたらめちゃくちゃ困ります。だけど推し武道を読むと、エンターテイメントが色々制限されてしまっている今でも、やっぱり推しを推すって楽しいという気持ちを取り戻せます。

推しとオタク、関係性は特殊ですが星の数ほどいるアイドルの中で推しを見つけたのは何かの縁、推し以外のアイドルが好感持ちこそすれ推すには至らない月日を過ごしていた中で全く別の界隈にいる人を見つけたのもまた何かの縁なので、その縁を大事にこれからもできるところまで無理なくオタクを楽しんでいきたいと思いました!